は、緊張してくると、無意識のうちに、心拍数が上昇したり、血圧が高くなったり、汗をかいたり、呼吸が速く浅くなったりします。

このような現象は、人がストレスを感じることによって、脳内でノルアドレナリンが分泌され、自律神経のうち、交感神経が刺激されることによって起きるんです。


これらのうち、心拍数や血圧や発汗などといったものは、自分の意思では、どうにもコントロールすることができません。



しかし、呼吸というものは、違います。


人は、普段、無意識に呼吸を行っていますが、自分の意思でもって、意識的に呼吸を行うこともできますよね。

つまり、人間の体の中で、呼吸だけが、無意識レベルでも、意識レベルでも、コントロールすることができるものなんです。


この「呼吸は自分の意思でコントロールできる」という性質を利用して、あがりをコントロールすることができるんですね。


先ほど、お伝えしたとおり、人は、緊張により交感神経が優位になると、呼吸が速くなり、浅くなってきます。

しかし、反対に、リラックスして、副交感神経が優位なると、呼吸がゆっくりになり、深くなります。



それでは、自分の意思で、呼吸をゆっくりと深くすれば、どうなるでしょうか?


もう、おわかりですよね。


そうです。呼吸をゆっくりと深くすれば、副交感神経が優位になり、心を落ち着かせ鎮静化させ、リラックスできる状態になるんです。


ですので、あがりを感じたときに、深呼吸をすると、リラックスした状態になり、あがりを抑えることができるんです。



それでは、深呼吸は、どのようにすれば、リラックスしてあがりを抑えるのに効果的なのでしょうか?


それは、腹式呼吸を使った深呼吸です。



呼吸には、胸式呼吸と腹式呼吸の2種類があります。


胸式呼吸とは、息を吸い込みながら胸を膨らませる呼吸のことです。
この呼吸は、交感神経を優位にさせる働きがあります。

なので、この呼吸を行うと、頭がすっきりとして、体に適度な緊張感を与えるので、リフレッシュしたいときにはいいですが、あがりを抑えるには逆効果となります。

一方、腹式呼吸とは、息を吸い込むときお腹を膨らませる呼吸のことです。
この呼吸には、副交感神経を優位にさせる働きがあります。

従って、この呼吸を行うことで、副交感神経が優位に働いて、体がリラックスして、緊張感が和らぎ、あがりが抑えらるわけです。

それでは、腹式呼吸を使った深呼吸について、やり方を説明しましょう。


まず、イスなどに腰掛けたゆったりした状態で、目を閉じます。

ポイントは、吐く息に意識を集中させることです。


1.口をすぼめて、ゆっくりと、できるだけ、細く長くなるように、息を吐いていきます。
そのとき、息を吐くと共に、お腹を凹ませていきます。


2.息を吐ききったら、口を閉じて、今度は、鼻から息をゆっくりと自然に任せて吸います。
このとき、吸うに従って、お腹を膨らませます。

3.これを10回繰り返します。


あがりそうなときには、このような深呼吸を前もって行うことによって、心を落ち着かせることができ、体も心もリラックスした状態へと導くことができます。


また、日頃から、このような深呼吸のトレーニングを行うことによって、どんな場面でも、自分をすぐさまリラックスできる状態に導くことができ、よりあがりにくい体質になることができます。